情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 07 am <「情報デザイン」の定義>
太田幸夫、 多摩美術大学、 日本

太田幸夫が増田米二(情報社会研究所所長、ニューヨーク工科大学名誉教授)、浜口隆一(建築サイン評論家、日本サイン学会初代会長)ほかと共にまとめた国際出版『サイン・コミュニケーション: CI/環境』(柏書房)では、「情報」を、「もの」と「エネルギー」同様、生物の生存にとって欠くことのできない三本柱の一つとみなす生物学的情報論および生物学的サイン論を展開している。

そこでは、情報は生物の誕生とともに始まる、という立場をとる。そして情報は、生物が自己の生存を維持していくための、最適行動選択に役立つ知らせであると認識する。生物としての生活主体が識別し評価した状況関係がすなわち情報なのである。これに対してサインは、情報の素子であって、意味をもつ事物や状況のしるしととらえる。外界が意味する多くのサインの中から、自分の価値基準にしたがって、特定のサインだけを選び出し、これらを組み合わせることによって、情報という形に作りあげていく。サインには生物全般が感知し反応するシグナルから、言語に代表されるシンボルシステムまで含まれる。

前者は直接的、行動的サインであり、後者は間接的、思惟的サインであって、両者のバランスの整え方は情報デザインにとって重要である。
人間の場合は、外部からサインとしての光、形、色、動きなどの視覚的シグナルを受け、あるいは文字や形や音声などのシンボルを手がかりにして、環境を情報として識別、認知し、評価、判断して行動する。それは単細胞であるアメーバが温度、光、酸、アルカリを識別、評価して食べ物を捉え、生存を維持するのに似ている。

このように考えると、情報デザインの意味もおのずと明らかになる。コンピュータ・ディスプレイやTVや映像スクリーンをはじめ、各種印刷メディアや生活空間・業務空間など、さまざまな環境を、適切な「サイン環境」あるいは情報環境(サインの集積による情報密度の高い環境)として分かりやすく整えることである。
それは環境を見取りやすくする「コミュニケーション環境の設計」を意味する。環境のサイン化によってコミュニケーション環境を整備するともいえる。

コミュニケーション環境とは、環境の部分と全体が環境の目的や個性によく見合って調和し、人々と環境の対話が育まれるようなアメニティーの高い環境を意味する。二つの用語、サイン環境とコミュニケーション環境は、実は、情報デザインの意味を表裏から説明する関係にあると言える。情報のインタフェース・デザインには本来、そうした両面性が望まれている。




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