情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 07 am <コンセプト: 情報とストラテジー>
田中譲 、北海道大学、日本

知の農場 文化遺伝子としての知識メディア

今日、学術・技術分野はますます多様化し、細かく分化するとともに、学際的研究もますます多くなってきている。学術・技術の高度化に伴って、多様かつ高度な研究成果が、研究論文やマルチメディア文書だけでなく、計測/分析/推論/設計/計画/製造のために開発された各種ツールも含めて、再利用・再編可能な活性化された形態で、学際的かつ国際的に速やかに流通・交換されることが益々重要になってきている。芸術家、音楽家、デザイナー、建築家、演出家、プロデューサの間でも、アイデアや作品が学際的かつ国際的に速やかに流通・交換されることが同様に益々重要になってきている。学術的・技術的・文化的知識の断片を有機的に外在化し実体化し、それらを先端的活用と国際的流通、再利用、再編集を促進する新しいメディア技術が必要とされている。このメディアは多様な知識資源を運ぶことができ、自己複製が可能で、自身を組み替えることができ、環境によって淘汰される。

R.ドーキンスのいうミーム(文化遺伝子)を運ぶメディアとなるので、このメディアをミームメディアと呼ぶ。遺伝子は生体に存在するが、ミームは社会の中に存在する。ミームの増殖と流通に必要なフレームワークはミームプールである。ミームメディアとミームプールは知識の農場のフレームワークを提供する。経済活動の導入により、ミームプールはミームマーケットとなり、ミームの提供者や流通業者は、利用者によるミームの再編集や再流通を禁止することなく、ビジネスを行なうことが可能になる。

1996年に設立された知識メディアラボラトリでは1987年来の研究をベースにミームメディアとミームマーケットのアーキテクチャの研究を行なっている。既に、IntelligentPadとIntelligentBoxと名付けられた2次元と3次元表現のミームメディア・アーキテクチャが開発されている。 IntelligentPadは個々の部品をパッド、つまりスクリーン上の1枚の紙として表現する。 パッドを別のパッドに貼ることにより、物理的に埋め込まれた関係が定義できるだけでなく、両者の間の機能連携も定義できる。パッドを貼り合わせることにより、多様なマルチメディア文書とツールが定義できる。特に断らない限り、合成パッドも分解可能であり、再編集可能である。IntelligentBoxはIntelligent-Padの3次元への拡張である。

例えば、鷲のワイヤーフレームモデルとこれに変形を与えるボックスを組み合わせて作られた飛翔する鷲のアニメーションを誰かが公開したとしよう。この鷲を3次元立体文字Aのワイヤーフレームモデルで置き換えることにより、飛翔する文字Aのアニメーションを容易に作ることができる。

ピアッツァは世界規模のミームプールとして働く。このシステムはピアッツァサーバとピアッツァクライアントからなる。ピアッツァクライアントはパッドとして表され、ピッツァサーバが管理するファイルと関係づけられている。ピアッツァパッドにデスクトップからパッドをドラッグ・アンド・ドロップしたり、逆にピアッツァパッドからデスクトップにパッドをドラッグ・アンド・ドロップすることにより、対応する遠隔サーバファイルとローカル環境の間でパッドをアップロードしたりダウンロードすることが可能である。ピアッツァパッドを開くと対応するサーバファイルに登録されているパッドがすべて即座にこのパッド上にダウンロードされ利用可能になる。ピアッツァパッドへの入り口もまたパッドで表現されるので、別のピアッツァパッドの上に置いて、このピアッツァへのリンクを定義することができる。ピアッツァサーバはいつどこにインストールしても構わない。そのクライアントパッドを公開するのも自由である。ピアッツァによって、エンドユーザーは、彼のパッドギャラリーをインターネット上に直接開いたり、別の誰かのギャラリーや公共ギャラリーの中に開くことができるようになる。

ミームマーケットアーキテクチャはピアッツァと特殊な課金機構を用いる。この課金機構はパッド(ボックス)の利用量を計り、パッド(ボックス)がユーザー間で再流通されてもユーザーによって再編集されても問題がない。



この検索について:

vp7 サイトデータベースは会議に関連した資料だけでなく、
情報デザインについての参考文献も網羅しています。

vp7 Sherlock PlugIn<MacOS 8.5x>のダウンロードはこちらへ。

info@visionplus7.com