情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 07 pm <事例: 情報とストラテジー>
リズ・サンダース、ソニックリム、米国

情報デザインの視野を広げて- 情報から経験へ-

経験することをデザインする
情報デザインは、1980年代に「ユーザー中心のデザイン User Centered Design」の活動として始まった。その目的は、ユーザーを考慮し情報をデザインすることにあった。インタラクション・デザインは、情報交換の流れにおける時間的な経過に主眼をおいたものだった。今日、私たちは「経験のデザイン」という言葉を聞くようになった。これは、物や出来事あるいは場所に関するユーザーの「経験」をデザインすることをその目的にしている。

もし私たちが、人々の経験−−過去、現在、または未来の可能性−−にアクセスすることを学べるなら、私たちはそれを、デザインプロセスにおける発想として、また、「ユーザーの経験」つまり、ユーザーが活動するためのインスピレーションの資源をつくり出すことができるようになるだろう。

ユーザーの経験を彼らのインスピレーションの資源としてつくり出すことによって、私たちは「経験すること」をより上手にデザインすることができるようになるだろう。


経験に、どのようにアクセスするのか?

人々がもっている、過去の思い出や、現在の経験、そして想像上の経験などから、私たちが経験について知る方法はいろいろある:

人々が何を話しているのか聞くこと。
人々が何を考えているのかを解釈すること。
人々が何をするのかを見ること。
人々が何を使っているのかを観察すること。
人々が知っていることを明らかにすること。
人々がどう感じているかを理解すること。
人々が夢に見ることに耳を傾けること。

人々が話すことに耳を傾ければ、彼らが言葉で表現できるものが何であるかわかる(すなわち、彼らにとって明確な知識)。彼らの行動や使っているものを観察すると、目に見える情報(あるいは、観察された経験)を得ることができる。
そして、考えていることや知っていることがわかれば、そこから彼らがその経験をどのように捉えているかも理解できるものだ。また、彼らがどう感じるかということを知ることにより、彼らの経験についてさらに理解が深まるだろう。このように知ることから「暗黙知tacit knowledge」−−言葉では簡単に表現できない知識−−を得ることができる。さらに、どのような夢を見るかということを考慮すれば、人々の未来が良い方向にどのように変わりうるかを、それが示唆してくれる。それは、潜在的な彼らの要求、言い換えれば、将来になってはじめて分かるようなニーズを明らかにする暗黙知のもうひとつの形である。

ただ単に「知る」という能力だけでなく、最も深いレベルでの表現ができたときに、はじめてユーザーに「共感する」という力が手に入る。人々の気持ちや夢や想像に歩み寄ることにより、私達はそれらに共鳴することができるのだ。そして、この深い表現のレベルに到達するには、特別な道具が必要だ。今、新たに「つくる」ための道具が現れてきている。

「人々が行動すること・話すこと・作ること」の3つのパースペクティブを、同時に探っていくことによって、製品や情報システムを使う人々を理解し彼らとの共感を築くことは、より容易になるはずだ。

「つくる」ための道具は、異なる専門分野や展望をもつ人々の思考やアイデアを結びつけるための共有される視覚言語を提供する。それは共同的なデザインのための新しい言語になりつつある。その道具を使うことで、「経験する人々」と「経験することをデザインする人々」の間でのやりとりが容易になることがわかってきた。「つくる」道具は、デザイナー達にだけではなく、ユーザー達にとっての「デザイン言語」なのである。それは、「形の美学」よりも「経験の美学」の上に成り立っている言語であるといえよう。


デザインは変化している
デザイナーとデザインを研究する人々の役割は、お互いに補完しあうような関係になってきている。両者の役割はぼんやりとした境界点で重なりあっているようだ。デザイナーの新たな役割は、その道具自体をつくり出すこと、そして、その道具によってユーザーや関連する人々が創造的に表現できる経験をつくり出すことにある。このことは、最終的に利益を得ることになる全ての人々にとって、デザインが生み出すさまざまな成果物を有意義なものにすることにつながっている。



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