情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 09 pm <関係のマッピング>
モデレーター: 堀内正弘、多摩美術大学、日本

「情報デザインとは、理解不能な情報を理解可能な情報に変えることである。そして理解可能となった情報は、それを受け取る人に力を与え、行動を呼び起こす指針となる。」
これはリチャード・ソウル・ワーマンによる情報デザインの定義であるが、これによると情報デザインという視点で取り組むべき目的、対象はきわめて多くなり、コミュニティーの構築もその範疇に入ることになる。現代社会におけるコミュニティーとは、地縁関係によるもの以上に、何らかの目的意識、あるいは価値観の共有により形成されるものである。

過去の社会では宗教などの信条が価値観として共有されていた。現代社会では市場経済的な価値観が世界共通の尺度となっているが、それは多様な価値を単一の価値に圧縮してしまう。より早く、より多く、より安くという、強者、あるいは多数派の価値が代弁され、弱者、あるいは少数派の価値は捨象されてしまう。そして南北問題などの現代の社会問題や環境問題の多くは、異なった価値観の対立によるものである。さまざまな立場に立った価値観がコミュニティー全体に提供されれば、声は小さくても重要な情報や弱者を代弁する声が伝わり、彼らのニーズがきちんと社会に反映されるようになる。このような力関係の矛盾を解決する鍵を握っているのがボランタリーな意志をもった人たちのネットワークの力であり、それはコミュニティーに不可欠なものである。

本セッションでは、特定の価値観の共有により形成されたコミュニティーにおいて、マップ、マネーといった基本的な価値情報伝達手段を独自にデザインしている事例を紹介し、情報デザインからの展開の可能性について検討する。

地図上の関係性のデザイン
古代の地図は想像力や権力などによる、特定のメッセージを伝達する手段であった。それに対して、情報が正確に記録された近代以降のマップは、膨大なデータの蓄積としての地理情報システムへと展開するが、それは現代社会そのものの鏡となる。データの集積となったマップからは特定のメッセージは消去され、読みとるためのインデックスが必要になる。そこに多元的なインデックスがデザインされれば、現代社会の多層構造を表現することも可能になる。

グリーンマップでは、世界共通のアイコンによる環境関連情報のインデックスが創られており、人と人、人と組織、人と地域などを相互に結びつけるきっかけとして機能することで新しいコミュニティーが構築されることが意図されている。

価値交換のためのデザイン
市場経済では労働、土地、金利、自然などのあらゆる対象が、経済価値という単一基準に圧縮されることで、付随する他の情報が削除されてしまう。その結果、消費者が商品の本当の価値について知ることは困難である。エコマネーのコンセプトは、遠く離れた生産者と消費者の間にコミュニティーとしての関係性を創りだすための有効な道具となる可能性がある。

フェアトレードによる第3世界の生産者と日本の消費者との連携、エコマネーの共有によるコミュニティーの構築、市民バンクのサポートや市民起業家の支援によるコミュニティーの構築、そしてそれぞれの事業におけるインターネットや無線LANの活用などは、市場原理に依存しない価値交換システムの実例である。

市民バンク、第3世界の生産者と先進国の消費者とのフェアトレード、エコマネー、市民起業家の支援、そしてそれらの事業でのインターネットや無線LANの活用などは、市場原理のみに依存しない価値交換システムを展開させるための重要な手段となる。





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